第11回 受賞作品紹介

物語部門

最優秀賞

『みみくそくん』杉江 勇吾

あらすじ

けいごくんの耳に住むみみくそくん。外から聞こえるいろいろな音を教えてもらって、けいごくんと仲良くなりました。でもママはけいごくんの耳に!みみくそくんは・・・

作者

文:杉江 勇吾
絵:長谷川 あかり

物語部門 選評

昨今のこどもの本の世界をにぎわす汚い系のブームに乗った作品かと読む前は思いました。しかし、物語の構成がしっかりしており、結末には心打たれました。こども文学賞の名にふさわしい作品に仕上がっています。絵本になれば、さらに「みみくそくん」のキャラクターも際立ち、こどもたちの人気を得ること、間違いありません。

選考委員 山本 省三
審査風景

こどもの部

優秀賞

『カナとアクビの女王』冨川 晴名

物語部門 選評

アクビの女王は魔法使い。夜更かしするこどもから起きている時の元気パワーを盗んで若返りエネルギーにしています。カナが「目覚まし時計」で女王を退治するアイデアがとても楽しい。物語の構成力と軽快な文章と愉快な展開が高く評価されました。冨川さんは「ことば忍法オノマトペ」(第九回最優秀)の作者。ぜひ物語を書き続けてください。

選考委員 すとう あさえ
審査風景

佳作

『ふみちゃんと雪だるま』青山 遊

『シャリやになったおすしやさん』山内 りあ

大人の部

優秀賞

『むかし行き専用タイムマシン』尾崎 純郎

物語部門 選評

家族が、認知症のおばあちゃんとどう向きあって過ごしていくのか、こどもにそれをどう伝えていくのかという課題を、タイムマシンという乗り物を通して問いかけていく力作。切なくも、明るく見守る家族の姿が、ほほえましく好感がもて、審査員の評価も高かった。

選考委員 かさい まり
審査風景

佳作

『小さなイス』伊藤 智枝美

『たまねぎ、とととん』飛田 泉

絵画部門

最優秀賞

『白猫一家の休日』長谷川 あかり

絵画部門 選評

幸せな白猫一家は、どんな休日を楽しんでいるのだろう。この一枚の絵から空想の世界が止まらない。絵画はことばによる物語でなく、交差する複雑なイメージの連続を、一瞬にして紡ぎだします。この作品は、猫親子が実際にその場にいるような空気に触れて、わたしたちの生活を膨らませてくれています。ほほえましい顔の表現も見事です。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

こどもの部

優秀賞

『たくさんうめるにわとりさん』仲川 真人

絵画部門 選評

画面一杯に描かれた構図はまさに圧巻。とても力強く惹かれました。そしてタイトルも素敵でした。描きたいものを気持ちの向くままに楽しんで描かれた絵というのは見ていて気持ちいいものです。たっぷりの想像力と気持ちが込められていることが伝わってきた作品でした。

選考委員 鈴木 潤
審査風景

佳作

『月夜の冒険』石井 吹季

『にんじんほりにきましたよ。』仲川 璃子

大人の部

優秀賞

『ゆめの中にカラフルどうぶつ』カミジョウ ミカ

絵画部門 選評

単純であって明解。強烈な色彩に囲まれた動物たちから、好き嫌いを超えた自由で陽気な感覚を与えてくれます。色による光の表現を普遍的なものとして画面にあらわせる。その色彩のうねりが、見る側に高揚するポップな気持ちとして伝えてくれます。明るい未来が訪れそうな予感がする作品となっています。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

佳作

『くまと夢』エメリヤノフ ニコラ

『ピアノの森』木村 淳

日本新薬特別賞

『泉の夜の演奏会』しばの いずみ

『あめのぼり、あまのじゃく』杉本 千佳

第11回 選考委員紹介

日本新薬こども文学賞 選考委員の紹介です。

かさい まり(絵本作家)

プロフィール
北海道生まれ。北海道芸術デザイン専門学校卒業。心のゆれを丁寧に表現したお話作りを続けている。全国で講演、読み語りを行い、小学校の国語、道徳の教科書に絵本が掲載されている。「とくべつないちにち」(ひさかたチャイルド)で、タイ・ブックスタートアワード賞、「ムカッ やきもちやいた」(くもん出版)で、児童文芸幼年文学賞、「くれよんがおれたとき」(くもん出版)で児童ペン賞絵本賞、「ばあちゃんのおなか」(好学社)で、けんぶち絵本の里アルパカ賞を受賞。日本児童出版美術家連盟、日本児童文芸家協会会員。ホームページhttp://kasaimari.com/

鈴木 潤(メリーゴーランド京都 店長)

プロフィール
三重県生まれ。四日市市のこどもの本専門店「メリーゴーランド」で、毎月行うレクチャーやこどもの施設を訪ねるツアーなどの企画を13年間担当する。2007年に京都店の出店に伴い京都に移住、店長を務める。雑誌、ラジオ、テレビなどでの絵本の紹介、子育てにまつわるエッセイの執筆、講演会など、多方面で活躍。2016年、京都に暮らす日々を絵本と結び付けながら綴ったブログ「本を読む日々」をまとめた『絵本といっしょに まっすぐまっすぐ』(アノニマ・スタジオ)を刊行。

すとう あさえ(絵本・童話作家)

プロフィール
東京に生まれる。お茶の水女子大学卒業。幼児教育番組の制作を経て絵本の世界へ。『子どもと楽しむ行事とあそびのえほん』(のら書店)で産経児童出版文化賞を受賞。『ざぼんじいさんとかきのき』(岩崎書店)、『はしれディーゼルきかんしゃデーデ』『十二支のおもちつき』(童心社)、『ゴチソウドロ、どこにいる?』(くもん出版)『くませんせいのねているうちに』(ハッピーオウル社)『はじめての行事シリーズ全12作(既刊7作)』(ほるぷ出版)ほか。一般社団法人日本児童文芸家協会常務理事、学校法人駒場幼稚園理事長。

坪内 成晃(つぼうち しげあき 京都精華大学名誉教授)

プロフィール
1944年、京都市生まれ。京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)卒業。京都精華短期大学(現京都精華大学)助手、京都精華大学講師、助教授を経てデザイン学部ビジュアルデザイン学科 イラストレーションコース教授。2010年、学長に就任し、2014年まで務める。京都精華大学創立時より一貫してビジュアルデザイン教育に携わり、数多くのクリエイターを輩出。専門はイラストレーション、ポスター、舞台デザイン、装丁等。

細谷 亮太(ほそや りょうた 聖路加国際病院 小児科 特別顧問)

プロフィール
1948年、山形県生まれ。72年、東北大学医学部卒業、聖路加国際病院小児科勤務。77~80年、テキサス大学MDアンダーソン病院がん研究所小児科にクリニカルフェローとして勤務。80年、聖路加国際病院に復職し、94年小児科部長、2003年副院長。専門は小児血液・腫瘍学。俳人(俳号は喨々)としても活躍するほか、エッセイやコラムを多数執筆。主な著書に『医師としてできることできなかったこと』『小児病棟の四季』ほか。

山本 省三(やまもと しょうぞう 絵本・童話作家)

プロフィール
神奈川県生まれ。医薬品メーカーのコピーライターを経て、絵本をはじめ、紙芝居、童話等の創作に携わる。文とさし絵の両方を手掛け、絵本では『月をめざしてしゅっぱつ!』(小学館)、『みんなをのせて バスのうんてんしさん』(講談社)、『おてんとうさまがみてますよ』(PHP)などがある。『動物ふしぎ発見』シリーズ全五巻(くもん出版)で、第34回日本児童文芸家協会賞特別賞、『深く、深く掘りすすめ!〈ちきゅう〉』(くもん出版)で第1回日本子どもの本研究会作品賞を受賞。現在、一般社団法人日本児童文芸家協会常務理事。

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