第10回 受賞作品紹介

物語部門

最優秀賞

『おふろにはいるときは』谷本 美弥子

あらすじ

温泉に一人で入ることになったぼく。脱衣所で服を脱いでいると、入ってきたのはなんとライオンです。次々と脱衣所に現れ毛皮や耳つきぼうしを脱ぐ動物たちと、ぼくは・・・

作者

文:谷本 美弥子
絵:みたに ゆきひこ

物語部門 選評

日頃、だれもがあたり前のように体験している“おふろに入る”という習慣の中から、お話の種をみつけだし、意外性にあふれる、楽しいお話を創りあげています。思わず、クスッと笑ってしまう、心あたたまる上質なユーモアが、特に高く評価されました。最優秀賞にふさわしい作品です。

選考委員 岡 信子
審査風景

こどもの部

優秀賞

『一輪車のえい画屋さん』杉田 珠江

物語部門 選評

少し前まで、写真も映画もフィルムでさつえいしていました。ですから、映画もフィルムを巻いたリールをクルクルまわして、スクリーンにうつしていました。この映写機のリールと一輪車を重ね、ペダルをこぐと映画がはじまり、それを動物たちが楽しむという、それはそれは美しいファンタジーの世界。すばらしい発想です。

選考委員 山本 省三
審査風景

佳作

『まほうが使えるようになったけしごむ』わらび ゆめの

『戦国お悩み相談室』遠藤 萌花

『おばあちゃんは、おばあちゃん』河合 理紗

大人の部

優秀賞

『ウサギ村のすもう大会』天見 純二

物語部門 選評

年に一度のウサギ村のすもう大会。優勝したのは月でおもちをつくウサギ、シロノスケ。シロノスケはすもう大会に出たいと思い続けながら、月から村をずっと見ていたのですね。なんていじらしいのでしょう。ほのぼのとしたやさしさで包まれたお話です。文章表現もとても丁寧で豊かです。審査員全員が高く評価しました。

選考委員 すとう あさえ
審査風景

佳作

『風の子コチ』立岩 由子

『こいしのしたに』寒川 潤子

『なっとうじいちゃんとなっとうばあちゃん』せきね まき

絵画部門

最優秀賞

『大空へ!!』三谷 靱彦

絵画部門 選評

平面的な絵だけれど、連続して空けられたドットが、心地よいリズムやハーモニーを紡ぎ出しています。にじみやぼかしで色どられた明るい画面からは、懐かしさと新しさが不思議に合わさった世界を表現しています。さらに単純なモチーフだけで構成している大胆さが、見る側に様々な物語を連想させる意外性に富んだ一枚となっています。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

優秀賞(こどもの部)

『どあっぷ カブトムシ』RIKUTO

絵画部門 選評

画面いっぱいに伸び伸びと描かれていて、大胆な構図が素晴らしい作品です。こちらに迫ってくるような力強さと、あふれる生命力に思わず笑みがこぼれます。愛くるしい瞳の表情がこの絵に温かさを加えていて、作者がカブトムシを見つめる時の、視線の優しさが作品から伝わってきますね。昆虫の魅力を見事に描き出した秀作です。

選考委員 鈴木 久美
審査風景

優秀賞(おとなの部)

『逃さないでと言ったのに』倉羽 博之

絵画部門 選評

重厚で味わい深い作品です。昭和を思わせる機械じかけの生き物のような乗り物は、何を暗喩しているのでしょうか。卓越した描写に裏づけられたコラージュ風の技法は、時空を越えたSF的世界にぴったり。奇抜で少し不気味な雰囲気が、かえってユーモラスに感じられるのは何故でしょう。観た後、ずっと目に焼けつく力を持っている絵です。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

佳作

『ファンタジーランドへ』りゅうのすけ

『大えど つみきまち』宮野 佑希

『たのしい時間』山村 アンジー

日本新薬特別賞

『ぼくだけのこびとたち』堀 百伽

『ドリームサーカス物語』佐藤 勝則

第10回 選考委員紹介

日本新薬こども文学賞 選考委員の紹介です。

岡 信子(おか のぶこ 絵本・童話作家)

プロフィール
岐阜県に生まれ、東京に育つ。幼稚園教諭を経て、児童文学作家として独立。主な作品に『海の見える観覧車』(小学館)、『夜あるくお人形』(文研出版)など多数。『花・ねこ・子犬・しゃぼん玉』(旺文社)で日本児童文芸家協会賞を受賞。『はなのみち』は、30年にわたり小学一年生の教科書に、『おおきなキャベツ』は小学二年生の教科書に掲載され、多くの子どもたちに知られている。一般社団法人日本児童文芸家協会理事長を経て、現在、同協会顧問、及び公益社団法人日本文藝家協会理事。

鈴木 久美(すずき くみ 装丁家)

プロフィール
千葉県生まれ。東京造形大学造形学部デザイン学科を卒業後、角川書店装丁室に勤務。2014年に独立後、文芸書の装丁を中心に手掛ける。主な代表作に、赤川次郎『三毛猫ホームズシリーズ』、綾辻行人『Another』、内田康夫『浅見光彦シリーズ』、江國香織『はだかんぼうたち』、角野栄子『魔女の宅急便』、桐野夏生『猿の見る夢』、夏目漱石『集英社漱石コレクション』、宮部みゆき『三島屋変調百物語シリーズ』、湊かなえ『リバース』など。

すとう あさえ(絵本・童話作家)

プロフィール
東京に生まれる。お茶の水女子大学卒業。幼児教育番組の制作を経て絵本の世界へ。『子どもと楽しむ行事とあそびのえほん』(のら書店)で産経児童出版文化賞を受賞。『ざぼんじいさんのかきのき』『にょろへびやのへびんくん』(岩崎書店)、『はしれディーゼルきかんしゃデーデ』『十二支のおもちつき』(童心社)、『まなつのみみず』(佼成出版社)、『ゴチソウドロ どこにいる?』(くもん出版)。紙芝居に『ぶるるん ぶるた』『もちもちともだち』(童心社)など多数。一般社団法人日本児童文芸家協会常務理事。公益社団法人日本文藝家協会会員。

坪内 成晃(つぼうち しげあき 京都精華大学名誉教授)

プロフィール
1944年、京都市生まれ。京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)卒業。京都精華短期大学(現京都精華大学)助手、京都精華大学講師、助教授を経てデザイン学部ビジュアルデザイン学科 イラストレーションコース教授。2010年、学長に就任し、2014年まで務める。京都精華大学創立時より一貫してビジュアルデザイン教育に携わり、数多くのクリエイターを輩出。専門はイラストレーション、ポスター、舞台デザイン、装丁等。

細谷 亮太(ほそや りょうた 聖路加国際病院 小児科 特別顧問)

プロフィール
1948年、山形県生まれ。72年、東北大学医学部卒業、聖路加国際病院小児科勤務。77〜80年、テキサス大学MDアンダーソン病院がん研究所小児科にクリニカルフェローとして勤務。80年、聖路加国際病院に復職し、94年小児科部長、2003年副院長。専門は小児血液・腫瘍学。俳人(俳号は喨々)としても活躍するほか、エッセイやコラムを多数執筆。主な著書に『医師としてできること できなかったこと』『小児病棟の四季』ほか。

山本 省三(やまもと しょうぞう 絵本・童話作家)

プロフィール
1952年、神奈川県生まれ。横浜国立大学にて児童心理学を学ぶ。卒業後、医薬品メーカーのコピーライターを経て、絵本創作をはじめる。絵本の他、童話、紙芝居、パネルシアター、造形、パズル考案など、子どもにかかわるさまざまな分野を手掛ける。絵本では『おふろでぽっかぽか』(講談社)、『もしも宇宙でくらしたら』(WAVE出版)、童話には『ゆうれいたんていドロヒュー』シリーズ(フレーベル館)などがある。『動物ふしぎ発見』シリーズ全五巻(くもん出版)で、第34回日本児童文芸家協会賞特別賞を受賞している。現在、一般社団法人日本児童文芸家協会常務理事。

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