第4回 受賞作品紹介

物語部門

最優秀賞

『ミカヅキとくま』高橋 佑輔

あらすじ

お昼寝をしていたツキノワグマのこども。
目を覚ますと、なんと胸からミカヅキがとびだしていってしまいます。
こうしてこぐまのミカヅキさがしが始まるのですが……
普段、身近にありすぎて大切さを忘れてしまっている“何か”。
その尊さを問いかける美しいファンタジーです。

作者

文:高橋 佑輔
絵:いとう ゆりこ

物語部門 選評

好きでも嫌いでもなかった胸の三日月模様が、とつぜん逃げ出すという、意外性に富んだストーリー、やわらかくてあたたかな語り口、 全体に流れる上質なユーモアなどが、高い評価を得ました。水たまりに映る月を見て、大切だと気付いた失せ物を胸にすくいとる、情緒あふれるラストも秀逸です。

選考委員 岡 信子
審査風景

こどもの部

優秀賞

『こぐまのさかなつり』山内 琉夢

物語部門 選評

川へ釣りに出かけたこぐまの兄弟が、仲間の力をかりて釣りあげたのは、それはびっくりのものでした。大きなかぶにヒントを得て書かれた物語かもしれませんが、結末の驚きは、かぶ以上。よく思いついたなあと感心しました。そして驚かせるだけでなく、良かったねといえる終わり方がみごとでした。

選考委員 山本 省三
審査風景

佳作

『ふしぎなてぶくろ』藤田 健司

『ユウくんの海』坂井 敏法

『万華鏡』山内 隆史

大人の部

優秀賞

『六郎、飛んだ』吉村 健二

物語部門 選評

人の好い鬼が、村の飢饉を救うために、自らの命をもかえりみず、稚拙な羽をつけて高い崖から飛ぼうとする。雷にかけあうためである。 後半の風が吹く奇跡は読む者をほっとさせる。しかし、こうした自己犠牲話はよくあり、新鮮味に欠けるという意見が多かったため、おしくも大賞にはならなかったが、文章に力があり、鬼はどこかに生きていると希望をもたせているところが評価された。構成もしっかりしていて、読んだ後、なにより気持ちが浄化させられる。

選考委員 戸田 和代
審査風景

佳作

『しゃもじのわがまま』溝口 智子

『ものおきのひみつ』白矢 三恵

『ぼくは水たまり』辻橋 かおり

絵画部門

最優秀賞

『おさかなになった日』いとう ゆりこ

絵画部門 選評

パステルカラー調の明るい色彩と素朴なタッチのこの作品には、メルヘン世界を表現している代表的な技法があります。また、人、魚、虫、花、建物や服など、いろいろなモチーフをそれぞれ主張させながらバランスよく配置している力量には感心します。この作者は、どのようなテーマやストーリーであっても、自由に視覚伝達する才能をもっています。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

優秀賞

『ぼうや、月にいるの。』エメリヤノフ・ニコラ

絵画部門 選評

極端に切り詰められた顔と木の表情は、かえって描かれていないところに物語性の豊かさを紡ぎだすことができるユニークな絵画です。沈んだ色調の中にある文学的な薫りは、計算された構成のなかで強烈に漂わせています。記号的で非言語の一枚の絵が、見えない世界を魅せるという、まさにイメージの力を発揮している作品です。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

優秀賞

『海の魚とシンクロナイズドスイミング』渡邉 夢乃

絵画部門 選評

島や魚や女性がくり広げる水の祭典。あれ、人間が逆さまになっている!とびっくりする画面は、なんとシンクロナイズドスイミングが絵のモチーフになっているのです。この目の付けどころは新鮮。子供にとってテレビの世界も眼前の現実なんでしょう。色の使い方も自由奔放で、肉筆の力を持っている楽しくて元気な一枚です。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

佳作

『あおい服のねこ』小坂 大

『ふしぎなふしぎなおはなやさん』土居 望美

『ゆめのき』刀根 里衣

日本新薬特別賞

『あめのひ』船橋 愛

『しあわせパン』山村 渚

第4回 選考委員紹介

日本新薬こども文学賞 選考委員の紹介です。

岡 信子(おか のぶこ 絵本・童話作家)

プロフィール
岐阜県に生まれ、東京に育つ。幼稚園教諭を経て、絵本・童話作家として独立。主な作品に『海の見える観覧車』(小学館)、『夜あるくお人形』(文研出版)など多数。『花・ねこ・子犬・しゃぼん玉』(旺文社)で日本児童文芸家協会賞を受賞。『はなのみち』は、30年にわたり小学一年生の教科書に、『おおきなキャベツ』は小学2年生の教科書に掲載され、多くの子どもたちに学ばれてる。一般社団法人 日本児童文芸家協会理事長を経て、現在、一般社団法人 日本児童文芸家協会顧問、及び、(社)日本文藝家協会理事。

坪内 成晃(つぼうち しげあき 京都精華大学名誉教授)

プロフィール
1944年、京都市生まれ。京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)卒業。京都精華短期大学(現京都精華大学)助手、京都精華大学講師、助教授を経てデザイン学部ビジュアルデザイン学科 イラストレーションコース教授。2010年、学長に就任し、2014年まで務める。京都精華大学創立時より一貫してビジュアルデザイン教育に携わり、数多くのクリエイターを輩出。専門はイラストレーション、ポスター、舞台デザイン、装丁等。

戸田 和代(とだ かずよ 絵本・童話作家)

プロフィール
東京に生まれる。『ないないねこのなくしもの』(くもん出版)で児童文芸新人賞、『きつねのでんわボックス』(金の星社)で第8回ひろすけ童話賞を受賞。その他主な作品に『つきよのくじら』(すずき出版)、『かえるのかさやさん』シリーズ(岩崎書店)、『カバローの大きな口』(ポプラ社)、『だんまり』(アリス館)など多数。現在、一般社団法人 日本児童文芸家協会、及び、(社)日本文藝家協会会員。

細谷 亮太(ほそや りょうた 聖路加国際病院副院長・小児科部長)

プロフィール
1948年、山形県生まれ。72年、東北大学医学部卒業、聖路加国際病院小児科勤務。77〜80年、テキサス大学MDアンダーソン病院がん研究所小児科にクリニカルフェローとして勤務。80年、聖路加国際病院に復職し、94年小児科部長、2003年副院長。専門は小児血液・腫瘍学。俳人(俳号は喨々)としても活躍するほか、エッセイやコラムを多数執筆。主な著書に「医師としてできること できなかったこと」「小児病棟の四季」ほか。

正岡 慧子(まさおか けいこ 絵本・童話作家)

プロフィール
広島に生まれる。アメリカ系広告代理店勤務を経て、童話・絵本作家となる。日本女子大学にて栄養学を学び、1988年中国西安中医薬研究院に研修留学。中医学理論を学び、以後日本の薬膳の普及に尽力する。著書には『かばんの中のかば』(あかね書房)、『きつねのたなばたさま』(世界文化社)、PHP研究所のおしごとシリーズなど多数。『あなぐまのクリーニングやさん』『きつねのゆーれいコックさん』は感想文コンクール推薦図書。韓国での出版も多い。

山本 省三(やまもと しょうぞう 絵本・童話作家)

プロフィール
1952年神奈川県生まれ。横浜国立大学にて児童心理学を学ぶ。卒業後、医薬品メーカーのコピーライターを経て、絵本創作をはじめる。絵本の他、童話、紙芝居、パネルシアター、造形、パズル考案など、子どもにかかわるさまざまな分野を手掛ける。 絵本では『おふろでぽっかぽか』(講談社)、『なんじゃもんじゃのいのち』(金の星社)、童話には『おしゃれプリンセス ミューナ』シリーズ(ポプラ社)などがある。『動物ふしぎ発見』シリーズ全五巻〈くもん出版〉で、第34回日本児童文芸家協会賞特別賞を受賞している。現在、一般社団法人 日本児童文芸家協会常務理事。

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