第3回 受賞作品紹介

物語部門

最優秀賞

『ふしぎな水色のゾウ』月 ゆき

あらすじ

学校からの帰り道、バスをのりすごしてしまった「さや」が出会ったのはふしぎな水色のゾウ。 ふたりを結びつけたのは、いなくなってしまったはずのネコとの“やくそく”でした。
「生きるものはみな、なにかに見守られている」。そんなテーマを感じさせるやさしいお話です。

作者

文:月 ゆき
絵:いしばし ひろやす

物語部門 選評

ありえないことが、違和感なく、すーっと心に入ってくる物語です。ぞうが水色というのが、心を明るくさせます。不思議な出来事が、「飼っていた猫の配慮で、人は、かつて愛した者達に守られている」という、水色のゾウの言葉に説得力がありました。美しい情景描写も印象に残る、実在感のある、最高賞にふさわしいファンタジー作品です。

選考委員 岡 信子
審査風景

こどもの部

優秀賞

『風の子 ヒュン ピュン』坂井 敏法

物語部門 選評

ふたごの風の子の楽しい童話ができあがりました。まず主人公たちのいたずらが、どれも読者が身近に感じられる素材を使っている点が良いです。またその二つが結末にうまく活かされているところがすばらしいです。さらにおしまいに風の子のお母さんの優しさも伝わってきて、物語の組み立ての上手さに本当に感心させられました。

選考委員 山本 省三
審査風景

佳作

『ゆりかちゃんの給食大作戦』桜糀 乃々子

『いちごちゃん恐怖の「ん」の字に会う』周 愛唯

『しまくまのパンダ』小川 奈那子

大人の部

優秀賞

『もみじ平の秋』金子 隆

物語部門 選評

林の中を行く列車で、偶然であった少年とバイオリニスト。物語はふたりが気づかない方向へ展開していきます。なつかしさと、あたたかさ、意外性のある作品として、最後まで大賞候補作品に残りましたが、絵本というより文章で読ませるほうが、作品として味がでるのではないかということになり、優秀賞に決まりました。

選考委員 戸田 和代
審査風景

佳作

『ルーピーのあんないばん』田中 宏

『ねこンビニ』髙見 ゆかり

『ちょうだいな』季巳 明代

絵画部門

最優秀賞

『ネコゾウ』いしばし ひろやす

絵画部門 選評

ネコとゾウとコドモの組み合わせだけで、クールで豊かなストーリーを空想させています。シンプルで思い切りのよい画面構成と、控えた水彩による色の表現は、見る側を優しく気持ちのよい世界に誘います。単純な描写のなかにも卓越した造形性がみえるのは作者の力量の深さでしょう。ところでなぜネコとゾウなのか不思議です。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

優秀賞

『おおきな あんぱん』桶野 友恵

絵画部門 選評

なんという大胆な作品でしょう。生活のなかにごく普通にあるアンパンをモチーフにするアイデアには脱帽します。身近にあるものを素直に見せることが、逆に現実を超える世界を表現する好例でしょう。パンに今にもとびつきそうな子供達の表情は魅力的で生命感に溢れています。写生力が高いのも効果的です。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

優秀賞

『大好きな電車』大澤 翼

絵画部門 選評

自分の好きなものや興味のある風景を、思いきり自然に描いた明るく元気のよい絵です。まさに子供らしい子供の作品といえるでしょう。奔放で力強いえのぐのタッチ、対象にとらわれない自由な色づかいは独特なセンスもうかがえます。絵でしか表現できないイメージ力を感じ勇気を与えてくれる作品です。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

佳作

『明かりをどうぞ』朝倉 知子

『ぼくのヒミツきち』牛尾 渡

『うれシーサー たのシーサー 沖縄行きたいサー』上阪 主税

日本新薬特別賞

『自然と未来』田中 裕美

『向こう側のお菓子王国』CINDY KOO

第3回 選考委員紹介

日本新薬こども文学賞 選考委員の紹介です。

岡 信子(おか のぶこ 絵本・童話作家)

プロフィール
岐阜県に生まれ、東京に育つ。幼稚園教諭を経て、絵本・童話作家として独立。主な作品に『海の見える観覧車』(小学館)、『夜あるくお人形』(文研出版)など多数。『花・ねこ・子犬・しゃぼん玉』(旺文社)で日本児童文芸家協会賞を受賞。『はなのみち』は、30年にわたり小学一年生の教科書に、『おおきなキャベツ』は小学2年生の教科書に掲載され、多くの子どもたちに学ばれてる。(社)日本児童文芸家協会理事長を経て、現在、(社)日本児童文芸家協会顧問、及び、(社)日本文藝家協会理事。

坪内 成晃(つぼうち しげあき 京都精華大学名誉教授)

プロフィール
1944年、京都市生まれ。京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)卒業。京都精華短期大学(現京都精華大学)助手、京都精華大学講師、助教授を経てデザイン学部ビジュアルデザイン学科 イラストレーションコース教授。2010年、学長に就任し、2014年まで務める。京都精華大学創立時より一貫してビジュアルデザイン教育に携わり、数多くのクリエイターを輩出。専門はイラストレーション、ポスター、舞台デザイン、装丁等。

戸田 和代(とだ かずよ 絵本・童話作家)

プロフィール
東京に生まれる。『ないないねこのなくしもの』(くもん出版)で児童文芸新人賞、『きつねのでんわボックス』(金の星社)で第8回ひろすけ童話賞を受賞。その他主な作品に『つきよのくじら』(すずき出版)、『かえるのかさやさん』シリーズ(岩崎書店)、『カバローの大きな口』(ポプラ社)、『だんまり』(アリス館)など多数。現在、(社)日本児童文芸家協会、及び、(社)日本文藝家協会会員。

細谷 亮太(ほそや りょうた 聖路加国際病院副院長・小児科部長)

プロフィール
1948年、山形県生まれ。72年、東北大学医学部卒業、聖路加国際病院小児科勤務。77〜80年、テキサス大学MDアンダーソン病院がん研究所小児科にクリニカルフェローとして勤務。80年、聖路加国際病院に復職し、94年小児科部長、2003年副院長。専門は小児血液・腫瘍学。俳人(俳号は喨々)としても活躍するほか、エッセイやコラムを多数執筆。主な著書に「医師としてできること できなかったこと」「小児病棟の四季」ほか。

山本 省三(やまもとしょうぞう 絵本・童話作家)

プロフィール
1952年神奈川県生まれ。横浜国立大学にて児童心理学を学ぶ。卒業後、医薬品メーカーのコピーライターを経て、絵本創作をはじめる。絵本の他、童話、紙芝居、パネルシアター、造形、パズル考案など、子どもにかかわるさまざまな分野を手掛ける。 絵本では『おふろでぽっかぽか』(講談社)、『なんじゃもんじゃのいのち』(金の星社)、童話には『おしゃれプリンセス ミューナ』シリーズ(ポプラ社)などがある。『動物ふしぎ発見』シリーズ全五巻〈くもん出版〉で、第34回日本児童文芸家協会賞特別賞を受賞している。現在、(社)日本児童文芸家協会常務理事。

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