第15回 受賞作品紹介

物語部門

最優秀賞

『ぼくは時計!』平野 紗奈

物語部門 選評

家の中にある道具が、こっそりおしゃべりしているという発想がおもしろいですね。そして、主人公の時計をはじめ、エアコンのおじいさんなどの性格づけが巧み。それがストーリーを盛り上げるのに効果を上げて見事です。読んだ後には、道具への愛着が増すこと、間違いなしでしょう。絵本になるのが今から楽しみです。

選考委員 山本 省三

こどもの部

優秀賞

『写楽のぼうけん』酒誥 苺良

物語部門 選評

主人公は、写楽に描かれた絵だ。いつも美術館で退屈しているとか、もう手が疲れちゃったとか、笑える。で、写楽の絵は美術館を抜け出して街へ行く。行った先はショッピングモール。メイク用品売り場でメイクを試す場面もまた笑える。写楽がメイク! まじか! 自転車を漕いで額縁に収まってプチ冒険は終了。発想力ナンバーワンの作品でした。

選考委員 松永 正訓

佳作

『ゆいかちゃんとほしのようせい』髙橋 芙海

『大地と海に料理旅』西田 都和

大人の部

優秀賞

『おばあさんのひざ』藤谷 クミコ

物語部門 選評

おばあさんのひざ小僧に人格を持たせるという発想がすばらしいです。ひざ小僧は、娘さん手作りの膝掛けや孫のゆう君など、膝にのったものの温もりがうれしくて、「フンフン......」としゃべりはじめます。読み終わった後、おばあさんとそのひざの上で丸まっている猫の姿が浮かんできて、幸せな気持ちになりました。優しさに溢れた物語です。

選考委員 すとう あさえ

佳作

『ボール ぽーん!』くりはら みゆき

『何のふくろかな』矢代 稔

絵画部門

最優秀賞

『夢の木をつかんで』kado kado

絵画部門 選評

画面いっぱいに温かく健やかな空気が流れている絵です。明るい表情の人物を中心に、花や草、鳥、車、家そして犬など様々なものが回りを浮遊して幸せな世界をつくっています。それらは、けっして説明的ではなく、簡単な線で表現され、素直で自由な気持ちにさせてくれます。また、多彩な色の重なりは、イメージ豊かで、心のつながりを紡ぎだして効果的です。

選考委員 坪内 成晃

こどもの部

優秀賞

『カメさん 1とうしょうだね』井上 琴都

絵画部門 選評

「してやったり」とでもいうような嬉しそうな表情が良く、カメのドヤ顔と存在感もとても良いと思います。未来への希望を感じられる色使いも魅力です。頭の上に描かれた絵から、まるで地球の全てを丸ごと抱えての1等賞のようで、全部を背負って1等賞になったカメをたたえる気持ちが、タイトルからも感じられました。

選考委員 花田 睦子

佳作

『モンキー・バナナ』はな

『まほうの絵の具の世界』ひまぐろ

大人の部

優秀賞

『みたもん』清宮 哲

絵画部門 選評

描き込んだ応募作品が多い中、唯一シンプルな作品で目をひきました。肩の力をぬいて楽しく描いていますが、慎重な筆使いを感じました。ベテランの画家さんのいつもと違う描き方はとても新鮮です。この絵から想像が広がり、いろいろなお話が生まれてきそうです。この描き方で作品をつくってみてはどうでしょうか。

選考委員 かさい まり

佳作

『ほし集め』美馬 匠吾

『ひかりの森~お話きかせて~』金澤 麻由子

日本新薬特別賞

こどもの部

『七変化!!あざやかに解決 カメレオン探偵』内門 大士

大人の部

『おにぎりレース』カヤ ミズキ

きらきら賞

こどもの部

『宇宙まで飛んでいったホームランボールを取りにいったら宇宙人と仲良しになった』きいち

『かお』𣑋林 海衣

『願いをかなえにきましたよ』仲川 璃子

第15回 選考委員紹介

日本新薬こども文学賞 選考委員の紹介です。

山本 省三(やまもと しょうぞう 絵本・童話作家)

プロフィール
神奈川県生まれ。医薬品メーカーのコピーライターを経て、絵本をはじめ、紙芝居、童話等の創作に携わる。文とさし絵の両方を手掛け、絵本では『月をめざしてしゅっぱつ!』(小学館)、『みんなをのせて バスのうんてんしさん』(講談社)、『おてんとうさまがみてますよ』(PHP)などがある。『動物ふしぎ発見』シリーズ全5巻(くもん出版)で、第34回日本児童文芸家協会賞特別賞、『深く、深く掘りすすめ!〈ちきゅう〉』(くもん出版)で第1回日本子どもの本研究会作品賞を受賞。現在、一般社団法人日本児童文芸家協会理事長。

松永 正訓(まつなが ただし 松永クリニック小児科・小児外科 院長)

プロフィール
1961年、東京都生まれ。1987年、千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。小児がんの研究で日本小児外科学会より会長特別表彰(1991年)など受賞歴多数。2006年より、「松永クリニック小児科・小児外科」院長。『運命の子 トリソミー』で2013年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』で2019年、第8回日本医学ジャーナリスト協会賞・大賞を受賞。その他、著書多数。

坪内 成晃(つぼうち しげあき 京都精華大学名誉教授)

プロフィール
1944年、京都市生まれ。京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)卒業。京都精華短期大学(現京都精華大学)助手、京都精華大学講師、助教授を経てデザイン学部ビジュアルデザイン学科 イラストレーションコース教授。2010年、学長に就任し、2014年まで務める。京都精華大学創立時より一貫してビジュアルデザイン教育に携わり、数多くのクリエイターを輩出。専門はイラストレーション、ポスター、舞台デザイン、装丁等。

すとう あさえ(絵本・童話作家)

プロフィール
東京に生まれる。お茶の水女子大学卒業。幼児教育番組の制作を経て絵本の世界へ。『ざぼんじいさんのかきのき』(岩崎書店)、『はしれディーゼルきかんしゃデーデ』(童心社)、『れいちゃんのきせつのせいかつえほん』(のら書店)『おいしい行事えほんシリーズ』(ほるぷ出版)他。『はじめての行事えほんシリーズ全13作』(ほるぷ出版)で第45回日本児童文芸家協会賞特別賞、『子どもと楽しむ行事とあそびのえほん』(のら書店)で産経児童出版文化賞受賞。日本児童文芸家協会常務理事、学校法人駒場けやき学園理事長。

かさい まり(絵本作家)

プロフィール
北海道生まれ。北海道芸術デザイン専門学校卒業。心のゆれを丁寧に表現したお話作りを続けている。全国で講演、読み語りを行い、小学校の国語、道徳の教科書に絵本が掲載されている。「とくべつないちにち」(ひさかたチャイルド)で、タイ・ブックスタートアワード賞、「ムカッ やきもちやいた」(くもん出版)で、児童文芸幼年文学賞、「くれよんがおれたとき」(くもん出版)で児童ペン賞絵本賞、「ばあちゃんのおなか」(好学社)で、けんぶち絵本の里アルパカ賞を受賞。日本児童出版美術家連盟、日本児童文芸家協会会員。ホームページhttp://kasaimari.com/

花田 睦子 (はなだ むつこ 絵本・児童書専門店「京町家えほん館 むむむ」代表)

プロフィール
会社員時代に出会った1冊が絵本の世界にはまるきっかけに、1987年から絵本・児童書専門店「えほん館」を立ち上げる。絵本の販売だけではなく、絵本原画展や、人が集えるお店づくりにも力を入れ、子供たちをはじめ多くの人たちに絵本の素晴らしさを伝える。活動の場はえほん館にとどまらず、児童館や幼稚園、保育所などで、児童教育についての講演を行い、嵯峨美術大学、嵯峨美術短期大学の講師としても登壇。「絵本論」を多くの学生に教える中で「子供と絵本」の大切さを強く感じ、もっとその力を伝えていきたいと活躍の場を広げている。
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