第7回 受賞作品紹介

物語部門

最優秀賞

『しりたがりのおつきさま』花里 真希

あらすじ

小さな町をつなぐ、二両の電車のおきゃくさんは、まだ小さな男の子がひとり。まんまるおつきさまは、小さな男の子が気になって、お空の上からついていきます…… 物語も絵も美しい、心温まる絵本です。

作者

文:花里 真希
絵:なめかわ まい

物語部門 選評

天空のお月様が“知りたがりや”という発想が新鮮です。お月様が電車に乗る男の子を見守り、目的地に到着までを静かに語る文体に無理がなく、とても自然で、すーっと心に伝わってきました。ラストは、男の子の意外な言葉で結ばれていますが、そのユーモアのセンスも秀逸でした。最優秀賞にふさわしい優れた作品です。

選考委員 岡 信子
審査風景

こどもの部

優秀賞

『ふしぎなコンビニ』冨川 晴名

物語部門 選評

コンビニは、どんなに小さな町でもおなじ姿で建っています。そこを逆手にとって、こんなコンビニがあったらいいな!と、驚くようなコンビニを出現させました。ふしぎなコンビニは、ある日、とつぜんにょきにょきと土の中からでてきます。ラッキーな人だけしか行けないそうですが、ちょっと行ってみたくなる楽しいお話でした。

選考委員 戸田 和代
審査風景

佳作

『花火の魔法』水瀬 月乃

『子ねこのコトラの川作り』タイガーペン

『白くんのもようがえ』武田 遥菜

大人の部

優秀賞

『おでこごっちんパワー』さいとう まどか

物語部門 選評

大好きなしゅんちゃんが病気になった。どうしよう! バッタと蝶々とてんとう虫は、お母さんとしゅんちゃんがおでこをくっつけあって熱をはかる姿を見て、あれだ! 三匹はしゅんちゃんのひたいに向かって……。虫たちの心は作者の心です。描かれる親子の姿も、それを見ている虫たちの行動も、私達が失ってはいけない心です。教えられました。

選考委員 正岡 慧子
審査風景

佳作

『あめ、あめ、1・2・3』なな

『ぼくがかいた青い鳥』木村 あぐり

『雲のくう太』石井 洋充

絵画部門

最優秀賞

『チョコっとおでかけ』なめかわ まい

絵画部門 選評

オリジナリティで包む不思議で幻想的な作品です。単純なフォルムのカッパを着た猫は、表情も豊かで雨の中でも温かそうです。いろんな色を重ね、にじませてつくった色層は、落ち付いた琥珀色を表出し、見る側に深い安らぎを与えています。タイトルも洒落ていて、ことばからイメージを膨らませるセンスもあるようです。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

優秀賞(こどもの部)

『金色のしば犬』天野 美祈

絵画部門 選評

金色の絵の具で描かれたピカピカ光る犬。どうして光っているのでしょう。宇宙から来たのかな? それとも神様のお使い? もしかしてロボット犬? いろいろお話が浮かぶ楽しい絵です。形も堂々としていて、かっこいいなあと思います。まわりは銀色で、少ない色数でも迫力があって、見る人をひきつける絵になりました。

選考委員 山本 省三
審査風景

優秀賞(おとなの部)

『りぼんちゃんのおつかい』マスダ カルシ

絵画部門 選評

この作品は、色の紙を自由にカットし張り合わせた技法でつくられています。そのようにして偶然に生まれた色の断片を、細かくまとめる空間構成力は卓越しています。画面全体を眺めると文様のようですが、細部を見つめるとユニークな人や動物、植物達が命をふきこまれて躍っているようです。みんなをファンタジックな世界に誘う楽しい一品です。

選考委員 坪内 成晃
審査風景

佳作

『虹色のキリン』中島 優一郎

『きみは だあれ?』小沢 夏美

『雨がふってきたので』きたがわ じゅり

日本新薬特別賞

『深い森の中の秘密』北岡 にこ

『ひとりじゃないよ』山本 祐佳里

第7回 選考委員紹介

日本新薬こども文学賞 選考委員の紹介です。

岡 信子(おか のぶこ 絵本・童話作家)

プロフィール
岐阜県に生まれ、東京に育つ。幼稚園教諭を経て、児童文学作家として独立。主な作品に『海の見える観覧車』(小学館)、『夜あるくお人形』(文研出版)など多数。『花・ねこ・子犬・しゃぼん玉』(旺文社)で日本児童文芸家協会賞を受賞。『はなのみち』は、30年にわたり小学一年生の教科書に、『おおきなキャベツ』は小学二年生の教科書に掲載され、多くの子どもたちに知られている。一般社団法人日本児童文芸家協会理事長を経て、現在、同協会顧問、及び公益社団法人日本文藝家協会理事。

坪内 成晃(つぼうち しげあき 京都精華大学名誉教授)

プロフィール
1944年、京都市生まれ。京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)卒業。京都精華短期大学(現京都精華大学)助手、京都精華大学講師、助教授を経てデザイン学部ビジュアルデザイン学科 イラストレーションコース教授。2010年、学長に就任し、2014年まで務める。京都精華大学創立時より一貫してビジュアルデザイン教育に携わり、数多くのクリエイターを輩出。専門はイラストレーション、ポスター、舞台デザイン、装丁等。

戸田 和代(とだ かずよ 絵本・童話作家)

プロフィール
東京に生まれる。子どもの頃から好きだった童謡、唱歌から童話の世界へ。『ないないねこのなくしもの』(くもん出版)で日本児童文芸家協会新人賞。『きつねのでんわボックス』(金の星社)で浜田広介童話賞受賞。主な作品に『つきよのくじら』(鈴木出版)『かえるのかさやさん』シリーズ(岩崎書店)『カバローの大きな口』(ポプラ社)『だんまり』(アリス館)『バスガエル』(佼成出版)など多数。平成27年児童文芸児童文化功労賞受賞。一般社団法人日本児童文芸家協会監事。日本文藝家協会会員。

細谷 亮太(ほそや りょうた 聖路加国際病院 小児科 特別顧問)

プロフィール
1948年、山形県生まれ。72年、東北大学医学部卒業、聖路加国際病院小児科勤務。77〜80年、テキサス大学MDアンダーソン病院がん研究所小児科にクリニカルフェローとして勤務。80年、聖路加国際病院に復職し、94年小児科部長、2003年副院長。専門は小児血液・腫瘍学。俳人(俳号は喨々)としても活躍するほか、エッセイやコラムを多数執筆。主な著書に『医師としてできること できなかったこと』『小児病棟の四季』ほか。

正岡 慧子(まさおか けいこ 絵本・童話作家)

プロフィール
広島県に生まれる。広告代理店勤務を経て作家となる。主な絵本・児童書は、『きつねのたなばたさま』(世界文化社)、『ぼく、まってるから』(フレーベル館)、『あなぐまのクリーニングやさん』『探偵犬スコットと仲間たち』(PHP研究所)ほか。実用書には『からだの知恵 食のひけつ』(講談社)などがある。執筆のかたわら、読み聞かせ講座や高齢者のための朗読活動を続けている。現在、一般社団法人日本児童文芸家協会、(社)日本文藝家協会会員。

山本 省三(やまもと しょうぞう 絵本・童話作家)

プロフィール
1952年、神奈川県生まれ。横浜国立大学にて児童心理学を学ぶ。卒業後、医薬品メーカーのコピーライターを経て、絵本創作をはじめる。絵本の他、童話、紙芝居、パネルシアター、造形、パズル考案など、子どもにかかわるさまざまな分野を手掛ける。 絵本では『おふろでぽっかぽか』(講談社)、『もしも宇宙でくらしたら』(WAVE出版)、童話には『ゆうれいたんていドロヒュー』シリーズ(フレーベル館)などがある。『動物ふしぎ発見』シリーズ全五巻(くもん出版)で、第34回日本児童文芸家協会賞特別賞を受賞している。現在、一般社団法人日本児童文芸家協会常務理事。

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